今秋のNHK朝ドラになる、ニッカウヰスキー創業者
日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語
第十三回
運にも恵まれた。出会いには心底、感謝せねばなるまい。
本格ウイスキーづくりの夢を追っての、いばらの道であった。脳裏に恩人たちのあたたかい笑顔が浮かんでくる。
しゃにむに走り続けたわたしを支えてくれたリタ。そしてカーカンテロフのリタの家族。
設立に協力を惜しまなかった株主。妥協することない日々をともに過ごした技術者諸君、労苦をわかちあった工場の人々。
それにも増して、ピートや草炭層をくぐって恵みを与えてくれた水、シベルアからの雪交じりの寒風や、適度な湿気をもたらしてくれた約束の地、余市。これらの自然との邂逅は何にもまして奇遇であった。
この夢の道・技の道は、遥か青春のエルギンやキャンベルタウンに通じている。
「ウイスキーづくりにトリックはない」ウイスキーは、地球という有限の資産を借りてつくる、英知の液体である。
<生命の水>ウイスキーがつくり続けられることをありがたいと思う。
なぜならば、自然がまだ力を失っていないことを、雄弁に語っているからだ。