今秋のNHK朝ドラになる、ニッカウヰスキー創業者

 

日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語

 

 

 

第十二回

 

 

 

 文字どおり苦闘のすえ、1940年に宿願の「ニッカウヰスキー」を世に送り出した。

 

 

 

名前の由来は「大日本果汁株式会社」を略して「日果」(ニッカ)、本格ウイスキー誕生の歴史的瞬間。

 

 

 

実に、スコットランド留学から数えて22年目の秋であった。

 

 

 

「マッサン、やっとできましたね」リタがまず頬を紅潮させて祝福した。

 

 

 

 透明の角型瓶には、格子模様が斜めに入っている。研究室の窓から机の上に置かれた瓶に、余市晩秋の光が差し込み、政孝とリタを囲む技師たちに反射して、あたかも崇高な光のかたまりが、天から降りて来たようだ。

 

 

 

誰もが至福の表情で、瓶の中にいきづく琥珀色の液体に、いつまでも見入っていた。

 

 

 

 万感胸にせまる想いをおさえて政孝は、冬近い余市の空を見上げた。このウイスキーを摂津酒造の阿部社長、グラスゴーのウイルソン博士、ヘーゼルバーン蒸溜所の老職工、ロングモーン蒸溜所のグラント工場長を始め、留学中に体あたりしていった恩ある人々に捧げたい・・・遥かスコットランドに心をはせた。

 

 

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