平成26年度後期(9月29日~3月28日)NHK連続テレビ小説「マッサン」は、日本のウイスキーを生んだニッカウヰスキー創業者竹鶴政孝氏とそれを支えたリタ夫人を主人公にしたドラマです。

竹鶴政孝物語〈第1回〉

彼は、大正期、ウイスキー誕生の地、スコットランドに乗り込んで本格ウイスキーの製法技術を持ち帰った。<o:p></o:p>

 

後年、英国副首相に「万年筆一本で、我が国のウイスキーの秘密を盗んでいった青年がいた」と<o:p></o:p>

 

ユーモアたっぷりに賞賛された男である。<o:p></o:p>

 

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 広島県の醸造家に生まれた政孝は、摂津酒造に入社。やがて社長、阿部喜兵衛の認めるところとなり、スコットランドへの留学を果たす。<o:p></o:p>

 

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 苦悩をつきぬけ、歓喜にいたれ<o:p></o:p>

 

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 時がたてば苦悩も楽しい思い出に変わるものだ。<o:p></o:p>

 

あの時はあんなに悩み、絶望の淵に立つ思いであったのに、今となってはそれが必然にすら思える。<o:p></o:p>

 

時に効用である、降り積もる時間の恵である。<o:p></o:p>

 

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窓枠には、雪が優しく降り積もっている。<o:p></o:p>

 

少しくすんだ硝子に政孝の憔悴しきった顔が映っている。<o:p></o:p>

 

 「このままでいいわけがない」<o:p></o:p>

 

 グラスゴーにきて、どれくらい経っただろうか。またこの言葉を何回呟いたことだろう。<o:p></o:p>

 

街のあらましがひととおり頭に入った頃、政孝の悩みは頂点に達した。<o:p></o:p>

 

当てにしていた大学に、ウイスキー醸造に関する専門的講座がないのである。<o:p></o:p>

 

こんな遠くまで来て引き返す訳にもいかず、派遣してくれた摂津酒造の阿部社長の顔が、さっきから浮かんでは消えていった。

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アサヒビール株式会社 2004年6月発行